こんにちは! てらっちです♪
家系図のライティングのお仕事から、幕末の蘭学医師を調べることとなり、そこから個人的に非常に興味をもち、結局仕事と関係なく司馬遼太郎の『胡蝶の舞』を読んでいます。
幕末のオランダ医学が日本にじわじわと広まる様子がとても興味深く、登場する人物も目の前にいるかのようにイキイキとして、登場人物たちが変革の時代の荒波を乗り越えていく姿が、なんだか愛おしいのです。
どんな本だったのか、ちょっとだけご紹介したいと思います。
一巻目
蘭学を物語の中心に据えて、幕末の動乱の時代を、翻弄されながらも生き抜く蘭学医師たちのお話し。
幕末から明治への混乱と移行期がなんだか、コロナをきっかけに昭和平成を引きずっていた世の中がガラッと変わりつつある今の世の流れに似ているようだと思いつつ、引き込まれて読んでます。
主人公は、幼い頃から記憶力が超人的だけど、コミュニケーションがイマイチ、いやかなり問題ありなコミュ障の、佐渡出身で農民出の伊之助。
幕末の蘭学医師、のちに日本の医学界を変えた男松本良順だけが伊之助の記憶力を買ってくれ、そしてコミュ障にも理解を示してくれる。だから伊之助は、その他の人間に関してどんなに身分が高かろうがえらい侍だろうが、対応は横柄だけれど、良順にだけは敬意を表してちゃんと敬語を使っています。そこがなんだかかわいい。
この良順は、将軍家の奥詰医師(将軍家専門の医者)。彼は最先端のオランダ医学を学んでいるのに、幕府の中は昔ながらの“漢方“重視の古ーい体質。
トップを牛耳る漢方医師連中が将軍のまわりを取り巻いており、勢力を張って何者も寄せつけないでいるのだから、蘭学なんて訳のわからん医学などとんでもない。
さらにその将軍専用の医者という地位は世襲だから、自分たちの身の安全と地位の確保のためにも受け入れられるはずがありません。
だから、最先端医療である蘭学が少しずつみとめられても、まだ幕府は受け入れられないまま、開国へ向けた動きはそっと忍び寄ってきます。
将軍家医師界の頂点メンバーは、世襲制。
だから役が偉いばかりでほぼ医学の知識のない人間が偉そうにふんぞりかえっているの。
そしてさらに悪いのが、良順が奥に詰めていても、めちゃんこ暇‼️やることないし、メンツや建前ばかりの世界に辟易し、蘭学最先端の長崎へ行くことを希望します。
っていうのが第一巻。
この時代、この立場から突如長崎へ行き、出来立てホヤホヤの海軍の医師になるなんて、わたしのつたない想像している以上にとんでもないことなんでしょう。
それにしても、冒頭にも書きましたが、幕末の動乱の時代と、今の状況がなんとなく似てるように思いました。
安政の大地震があり、その後流行病があり。
現在なら、東日本大震災があり、コロナがあり。
昔からのしきたりや、メンツにこだわり、なかなか新しい世の中に合わせられない人たちと、その中で新しい空気を感じ取って動く人たちがいる。
さらに……もうすぐ黒船もやってくる。
世が変わる時の空気感を学べるかな。
それにしても、当時麻酔なしで手術していたという箇所に身震いしてました。痛いよね😅現代に生まれて良かった。
二巻目
学校で習った士農工商、ふーんくらいにしかおもってなかったけど、これがなかなかとんでもないことを知る。
言わずと知れた江戸時代の身分制度。実はさらに同じ階級の中でも、さらに細かく身分がきっちり分けられている。
例えば当時の医者は、将軍は将軍専用の医者しか見ることができません。次のランクの人はそのランクに見合う医者しか見ることができません。
奥医師という将軍家用のお医者だけでも5〜6個ランク分けされてるくらいで、他の身分もそれぞれ細かくランク分けされていたそうです。
目付の立場、家老の立場でも、おいそれと話ができる、できないがあり、〇〇藩士となると、ちょっと低い立場。
〇〇藩士と奥医師である松本良順が話をするとなると松本良順の方がランクが高い。
ランクが高いと相手と直接話をせず、横についてる人が間に入って話をつなぐ。めんどくさい世の中。
だから幕末にオランダ医師が「身分は関係ない、将軍も貧民も病人は病人だ」とい西洋の考えを持ち込んだ時、幕府の存在自体がひっくり返ることを想像させるものだったらしい。
「病人はみな同じ立場」
今では当然であり、みな平等に受けられる診療も、当時としてはありえない大事件でした。
(武士だけにしろ、とかいう話もあった)それをなんとか松本良順が間に入ることで洋式の病院を開設した、というのが2巻。
貧しい人たちが病院で診てもらえることが、本当に喜ばれ、大繁盛していました。(お金は取らなかったので、もうかってはいませんが)
今回の感想
まあ、備忘録としてつらつら書きましたが、結論、もうめちゃんこ面白い!の一言です。
『坂の上の雲』と並ぶ傑作とレビューしていた方もいらっしゃり、わかってくれる人は分かってる!などと一人うなずいております。
改めて司馬遼太郎さんの緻密な下調べ、練り込まれたネタ作りと、目の前で生きているかのような人物像の造形に惚れ込むばかり。
どうやって書いてるんだろう笑
普通に資料を調べただけではあんなに生き生きとした人たちは生まれません。
こうなったら司馬先生の卓越した常人の理解の及ばない豊かな想像力の海にどっぷり浸かり、もう余計なことを考えずに楽しませてもらいましょう。
残りの3、4巻が楽しみです♬
あー完璧に趣味のお話でした笑
てらっちでした♬