あるセミナーで私は彼を見、その彼が、社会起業家である、ある人物と同じではないかと勘ぐっている。
とはいえ、そのセミナーへ参加していた彼が、その有名社会起業家と同一人物ではないかというわたしの疑念に、わたしは自分で納得がいっていない。
性格診断しえ、そこからお金につなげていこう!といったセミナーだったのだが、
どうやら私の中では社会起業家である人は清らかな聖人であってほしいと言う願望があるようなのだ。お金がほしい!(と言っていたわけではないが)と欲にまみれた、そんなセミナーなんかに参加してほしくない、と自分の中で思っているのだと思われる。
私が彼を初めて知ったのは、ライターの仕事を探していた時。
その時に彼の会社が私の求めていた仕事とほぼ一致。残念ながら東京まで日常的にいかなければならない条件だったため、その時諦めたのだが、1番印象に残っている会社だった。
そしてまた別の時。
私は女性支援の仕事をし、保育について調べていた時も彼の名前が出てきた。どうやら小規模保育のロールモデルとなったのが、彼の起こした事業形態だったよう。
そして先日は、ライフネット生命の出口さんとの対談本を読みさらに興味を深めた。
そこから今回彼の書いた本を読んだ。
その本の中で彼は、普通の男子なんだよとアピール。男性性も当然あるし、飲みの席でおっぱいの話で後輩と盛り上がったりする。
なにしろ、もう小説家になれるんじゃないの?という巧みな筆致で、そんなことが書かれていく。
女性にもモテたい。
お金も稼ぐけど、なんのために?
彼は成果していたITベンチャーの社長の座を降りた。
自分は社会の役に立ちたいのだ。
それに気づくのだが、そんなのは偽善じゃないかと、自分の中でボクシングの試合として表現される。
読み続けると、当然ながらサクセスストーリー。
今では立派な、政府も認める社会起業家だから、サクセスしているのは周知だろう。
本の途中、役所に事業のせいで役所の仕事が増えたから「こまるんだよね」と言われたり、厚生労働省がせっかく何年もかけて積み上げてきた事業形態を真似して横取りしていったり。次から次へと山あり谷ありの事件も。
あれやこれや。
本当に苦難を乗り越えている。
でも、コミカルな筆致が重苦しくしていないから、普通の小説のように楽しく読める。
苦難の中、それでも一歩一歩前へ進んでいく。
彼は慈善家じゃない。
もともとは、ITベンチャーの社長だから、当然だ。
事業としてこのフローレンスをやっているのだ。
冒頭のセミナーを思い出す。
政府からお金をもらい、事業をやっていると、その時説明していた。顧客からもらわないでやる仕事があるなんて、わたしは初めてその時に知った。
かれは、お金を回しながら、慈善事業ではなく、社会事業としてやっているのだ。
そして何より、この事業を社会で待ち望んでいるひとたちがいる。
わたしの進みたい、保育や女性支援の世界だ。
病気になった子どもを預かってもらえずに、会社をクビになった女性がいる。それってやっぱりおかしい。子どもは熱を出すものだし、子どもはこれからの世界を担うのに、なぜ疎まれるのか。少子化になるわけである。
そのひとたちの声に応えた、病児保育という事業。
その人たちの支えを強く感じられるのが、社会事業なのかもしれない。
彼はまだ子育てをしたこともないのに、保育の事業を興した。彼にやれて、子育て経験者であるわたしにできないことはない!という気持ちと、こんなにすごいことはわたしにはできない、という気持ちと入り混じった、そんな読後感が残った。
ただ、わたしも社会起業ってやつをやりたい、とは漠然と思う。
一つ一つ問題を洗い出して、やれることから始めよう。
興味のある方は、本の巻末にNPO法人の一部が載せられているので、そこに連絡してみるのもいいかも。
冒頭のセミナーに参加していた人物。
彼がこの駒崎さんと同一人物かは今となっては確認しようもない。ただ、本を読み終えたあと、こう感じた。
もしあの人物が彼だとしても彼の集めたお金なら、きっと、まわりまわって社会で必要としている人のために、生きたお金となってかえっていくのかもしれない。

「社会を変える」を仕事にする: 社会起業家という生き方 (ちくま文庫)
- 作者: 駒崎弘樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/11/09
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 12回
- この商品を含むブログを見る
出口さんとの対談の本