『古事記』と『日本書紀』は、知らない人も多いのですが、実はとても似ています。
両方とも日本創世神話からはじまり、神さまたちの伝承、活躍がつづられ、そして神代から人代の天皇へと系譜がつづいていきます。
しかし、同じ話でも『古事記』と『日本書紀』の両方を比べますといろいろ微妙な違いが気になってきますので、今回はその違いをいくつか比べてみたいと思います。
この『記紀』(『古事記』『日本書紀』を略してこう呼びます)のおおまかな違いを説明をしますと、
1.『古事記』は物語を重視している。
それに対し、『日本書紀』は政府公認の正史として、天皇の歴史の記録を重視している
それに対し、『日本書紀』は政府公認の正史として、天皇の歴史の記録を重視している
(だから『日本書紀』は少し堅苦しいイメージ)
2.『日本書紀』は「一書」のような書き方で、地方に散らばる伝承も記録している。
『古事記』にはそのような表記はない。
『古事記』にはそのような表記はない。
3.『古事記』は歌謡などを、漢字を音読みすることで古来より伝わる日本語を表現しようとしている。
『日本書紀』は漢文のみで書き著している。
こんなところでしょうか。
書き始めはどちらも日本の創世神話から始まりますが、さっそく微妙な差が現れます。
まだ天地の区別もなく、陰陽の別も生じない混沌とした世界から物語ははじまり、そこから神さまがひとりでに葦の芽のように生じ、生まれ出てきたというところを現した表現は、『日本書紀』のほうが非常に想像力豊かな表現をしています。
『古事記』では、
引き続いて五組十柱の男女ペア神が生まれ、
ウマシアシカビヒコヂノカミから七組十二柱を総称して神世七代(かみのよななよ)といいます。
この一番最後に生まれているのが、有名なイザナギ・イザナミのペア神です。
『日本書紀』では、
その後、四組八柱の男女のペア神が生まれてきます。やはり最後に生まれたペア神がイザナギ・イザナミです。
このあたりの神様は、イザナギ・イザナミ以外はその後ほぼ活躍しないため、私的には違和感のある存在なのですが、
もしかしたら、有史以前の日本に伝わる神や、英雄であるのかもしれません。
ちなみにですが、『古事記』の一番初めの神、
- 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)は、じつは藤原鎌足をあらわしているのではないか、という説もあります。
さて。
イザナギイザナミの夫婦神さまも生まれ、この夫婦神の結婚から国生み神話へとつづきます。
日本は、このイザナギ・イザナミの手作りだったんですよ。
「この二神は天と地の間にかかる天の浮橋に立って、
天の沼矛(あめのぬぼこ)を地上にさしおろし、
海水をこおろこおろとかき鳴らし、
…塩が積もって固まったのが、オノゴロ島である」
天の沼矛(あめのぬぼこ)を地上にさしおろし、
海水をこおろこおろとかき鳴らし、
…塩が積もって固まったのが、オノゴロ島である」
このオノゴロ島におりたち、ちょっと突っ込みどころ満載なリアルな性描写があったりして、ふたりは交わりの儀式をおこないます。
そして日本の国、島々を生んでいったんですね。
『日本書紀』では、イザナギイザナミの夫婦神がどの順で国を生んでいったのかということを、天地開闢につづき、”一書”という表現をつかって、第一から第十まで書いています。
この”一書”という書き方は初めの神話の段だけですが、集めた情報を事細かに記しています。
『古事記』ではこのようなことはおこなわれていません。
『古事記』ではこのようなことはおこなわれていません。
そうそう、この国生みで面白かったのが、四国の話しです。
「次に伊予之二名島(いよのふたなのしま)(四国)をうんだ。
- 体は一体だが、顔が四面ある。顔のそれぞれの名は
- 伊予の国を姉姫の意で、愛比売(えひめ)
- 讃岐の国を食物の霊のよりつく男の意で、飯依比古(いひよりひこ)
- 阿波の国を穀物をつかさどる女の意で、大宜都比売(おほげつひめ)
- 土佐の国を勇武な霊のよりつく男の意で、建依別(たけよりわけ)
- と名付けた。」
- 四国の歴史がこんなにも古く、このころからすでに四つに分かれていたというのは、四人に支配されていたとか政治的に何かあったのでしょうか?
- それよりも興味深いのは、愛媛と言う名がすでに『古事記』にも表れていること。
- それから四国の半分は大変おいしそうな名前であることが判明しました(笑)
- ああ、『古事記』と『日本書紀』の違いを書いていましたが、道が外れましたね……
このように、『古事記』と『日本書紀』は、ほぼ同じ話しを書いておきながら、おなじ話を表現するのにも、
神さまが違ったり、上記の例のように人数まで違ったりと不思議な点がいくつもでてきます。
神さまが違ったり、上記の例のように人数まで違ったりと不思議な点がいくつもでてきます。
なぜ違うのか、もしかしたら何かの意志が働いているのかなど、ちょっと謎解きをしながら読むと、また面白く読めると思います。
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