賀茂真淵(かものまぶち)記念館にたどり着く
さて、こちらがうわさの『賀茂真淵記念館』です。
大人300円、高校生150円、小中学生無料の良心価格。
入るとすぐお兄さんが対応してくれました。
まず初めにこちらの解説ビデオを10分鑑賞。
すごくなつかしい昭和の雰囲気たっぷりの女性の映像とともに『賀茂真淵』の生い立ちの解説を聴きます。あまりのなつかしさに、これはいつの映像だろうということが気になって、話しの半分は耳に入ってきません(笑)
そのあと、他に人がいなければ受付のお兄さんにマンツーマンで解説をしていただけます。
内部の写真は御多分にもれず写真撮影禁止でしたので、写真はありませんが、もうわたしは興味津々で面白い話しをひとり占めで聞くことができました。ありがとうございました。
その中で興味深かった内容を紹介します。
賀茂真淵の生い立ち
女性教育の先駆者だった
賀茂真淵は、教育者としても第一人者で門人も340人いたのですが、門弟一覧を見ると、女性の名前がかなり並んでいます。
訊くと100人以上の女性の門人がいたとのこと。
やはりそれは当時でも珍しいことで、この真淵ならではだったのではと。
なにしろ真淵より下の代になると、とたんに門人は男性の名前ばかりが並び、女性の門人の名前が消えてなくなるのです。
馬渕が特別だったようですね。
真淵が主に万葉集を研究していたから、余計に女性が師事を仰いだのかもしれませんが、それを受け入れたこと、そしておそらく女性に教育などいらないという風潮もあったであろうに、しっかりと教育を施したこと。
解説兄さんの説明では、おそらく真淵本人が初めに教わったのが先ほど紹介した真崎という女性だった影響もあったのではないかとのことです。
教えた女性の身分もさまざま。奥女中、商人の娘、大名の奥さんなど。
賀茂真淵の株がわたしの中で一気に上昇しました。
ハイレベルな印刷技術
実際に印刷された書物を目にして思ったことが、
「これは手で書いたものではないのか?」
というほど、美しい草書の印刷物だったのです。
当時の印刷された書物と一緒にその版木も展示してあったのですが、その緻密な彫りのすごさ、細やかさ。まだ西洋の活版印刷は入っていないため、一枚の板に墨で書かれた決定稿を裏返してあて、それを専門の技術者が彫っていくのですが、まあ、そのできばえが細やかで繊細で、なにしろ美しい!
自称アーティストの私としては(誰がじゃ)、彫刻の難しさはよくわかります。
学校でも経験がありますが、ちょっと失敗しても取り返しがつかないじゃないですか、彫刻って。それを緻密な草書体の筆致をも、見事な彫りの技術で再現しているのです。
まさかここで、そんな印刷技術で感動するとは思いもしませんでした。
50音表を初めて発表した真淵
書物によっては今の国語の教科書としても使えるのではないかというほど、内容も出来上がっており、装丁もまさしく教科書、でした。
学生さんには迷惑な話ですが、どうやら真淵が日本語教育の基礎を築き上げたようで。
鎌倉時代から『あいうえお』の50音表はあったらしいのですが、『いろは』が一般的だった当時において、はじめて50音を著したのが真淵、どうやらかなり画期的だったことのようです。
動詞の活用や古典の係り結びなど、細かい文法のなりたちについても研究してまとめました。
もしかしたら、真淵がいなかったら動詞の、サ行ナンチャラ活用、なんて単語、覚えなくてよかったのかもしれません(笑)
そう思うと、迷惑なひとだなあ。
文法嫌いでした^^;
オススメは『万葉集』の予習
もし余裕がありましたら、『万葉集』をちらっと予習してくると、より楽しめると思います。
賀茂真淵は「古事記」関連ばかりかと思っていたら、「万葉集」が主な研究対象。記念館でも、馬渕とその門人の歌が多数展示されています。
ちょっと歌を読めた方が楽しめるのではないかと思います。
「万葉集」がもともと「万葉仮名」(ヤンキーの当て字みたいなやつね)で成り立っている、ということもちょっと理解しておいてみると、馬渕らのオタクっぷりがよくわかります。
だってわざわざ「万葉仮名」で歌を書いてるんですよ。これはもう単なるオタクですよ。「オレはこんな書き方もできるんだぜー」って自慢にしか見えません(笑)
最後に

そんな馬渕キャラを詮索しながら、本日の見学は終了です。
個人的には大変楽しめました。
現物の書物に触っていいなら、一週間くらい泊まり込んで読みたいくらいです。
来館者のサイン帳を見ましたら、結構遠くから見えている方もいらっしゃいました。好きな人はわざわざ見えるんですね、やっぱり。
興味がある方は、ぜひ行ってみてくださいね!
関連エントリー